子ペンギンの個人懇談会は、教室で行われた。
いつも応接室で先生達と話し合いをしていたので、迂闊にも教室を見ないまま半年以上が過ぎてしまった。室内を見回し、まず目に入ったのが「一致団結」の赤く、大きな文字だった。黒板の上に掲げられた4つの漢字は、威圧感を漂わせていた。毎日あの文字を眺める子ペンギンの心中を察すると、もっと早く教室を見ておくべきだった。自閉症児が一番苦手とする「団結」をクラスのスローガンにするとは、困ったものだ。彼はどのようにあのスローガンを解釈しているのだろう。中国からある工場に視察団が訪れた。そこに掲げられた標語「油断一秒、怪我一生」を見て、一行は絶句する。中国語では「一秒でも油を切らしたら、一生責められる」という意味だ。同じ文字を使用しても、意味が異なる文化に我々は属している。正常発達の文化と自閉症の文化は、微妙に異なることを常に意識する必要があるだろう。